催眠状態を仮定した理論

 特殊状態理論や特殊過程理論と呼ばれるものがある。これは催眠誘導されると、ある特殊な意識状態(通常の状態とは異なる「催眠性トランス」と呼ばれる状態)に入るという仮説に従っている。「催眠性トランス」が何であるかについてはまだ議論があるところだが、一般には「注意が集中した状態」と言われる。決して眠ったような状態ではない!一応「催眠手続きによって誘導された注意が集中された状態」と考えておこう。

 まずは、現在の特殊状態/特殊過程理論の中から、dissociated control theoryを紹介する。

Dissociated Control Theory
 これはWaterloo UniversityのErik WoodyとKenneth Bowersによって1994年に提唱された理論である。行動の随意的・不随意的調整についての神経心理学モデル(NormanShallice, 1986)に基づいているという特徴を持っている。

★Normanらのモデル
 不随意的調整を行う
decentralized systemは、活動を統制するユニットあるいはスキーマで出来ている。このユニット/スキーマが活性化すると、それに対応する活動が実行される。このスキーマは他のスキーマあるいは環境の引き金によって活発化あるいは抑制される。この過程をcontention schedulingと言い、centerlized system(意識的・随意的な調整を行うシステム)の関与なしに自動的に進行する。
 しかし、全てが自動的な活動で済まされるわけはなく、
supervisory attention systemが課題の要求に従って活動を配分する。

★dissociated control theoryとは 
 催眠はdecentralized systemをsupervisory attention systemから切り離し、被催眠者の行動と経験とが催眠暗示によって自動的に引き起こされるというのがこの理論の要。

★これを支持する報告
 NormanとShallice(1986)によると、supervisory attention systemは前頭葉の機能で、ここが損傷すると@行動の計画A調整の問題、B自動反応の抑制の問題が生じるという。
 そのことから、被催眠者は前頭葉に損傷を受けた患者のように振る舞い、催眠者の暗示と教示とに自動的で、不随意的に反応することが考えられる。実際に、高い被暗示性を示す被験者では、催眠中に前頭葉の機能が低下することが確かめられている。

★この理論の問題点
・自己催眠あるいは自己暗示の説明ができない。
・複雑な催眠現象を説明できない。


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