催眠を学ぶことについて

 とかく催眠には偏見がついてまわり、大学生や院生が「催眠を勉強しています」というのには勇気が要ります。しかしながら、催眠を学ぶことは単に催眠技法に習熟する以上の効果があるようです。

催眠を学ぶことで得られる効果
1. 観察力
催眠誘導では、被催眠者の呼吸や微妙な筋緊張、表情を観察する技能が要求されます。また、被催眠者には閉眼してもらうので、じっくり観察しても相手に不快感を与えません。催眠誘導に習熟すると、臨床心理面接で相手の微妙なシグナルを敏感に読み取ることができるそうです。
2. 共感
相手の微妙なシグナルを敏感に読み取り、被催眠者の中で何が生じているのかを常に推測することが催眠誘導の成否を左右します。被催眠者の思考・感情・イメージを正確に推測することは臨床心理面接にも十分に生かすことが出来ます。
3. ペーシング
相手のペースに添うこと(引っ張るのでもなく、遅れすぎるのでもなく)は、ラポール形成の重要な要素の一つです。催眠誘導のフィード・バックを被催眠者から得られると、自分がどれだけ相手にペーシングできていたか知ることが出来ます。
4. 準拠枠の発見
相手の価値観や好みといった準拠枠を見つけ出し、それを利用することは催眠誘導のコツでもあります。臨床心理面接でもこの準拠枠を利用すると、抵抗を小さくすることが出来、面接を円滑に行うことが出来ます。
5. ユーティライゼーション
クライエントが面接に持ち込むもの全てを治療的に利用しようとする態度をユーティライゼーションといいます。催眠誘導では、相手の反応の全てを肯定しながらも、望ましい反応を引き出していきます。このコツがえら得れば、面接での抵抗を小さくすることが出来ます。また、この態度は相手の持ち込むどんなものも尊重する受容の態度に他なりません。
6. 催眠技能の非催眠場面での活用
その他に、催眠技能を利用して、臨床心理面接を円滑にすることができます。Ericksonの事例を読むとその妙味を知ることが出来ます。


ここに述べたものは、心理臨床家が催眠を学ぶことでどのような効果が得られるかでしたが、これは心理臨床家としての態度が基板にあってこそ得られるものです。催眠を学ぶものにありがちな性格傾向と、催眠を行うものとしての最低限の態度を考えてみたいと思います。
1. 万能感の理解
催眠は相手を強力にコントロールするものです。従って、催眠者の持つ支配欲求や万能感を強く刺激します。そもそも催眠なんぞに興味を持つ者は、万能感や支配欲求の強い人であることが多いです。謙虚に自分の性格特性を吟味し、必要以上に被催眠者をコントロールしないように心がけねばならないでしょう。
2. 精神医学的/臨床心理学的知識
重度のうつ病や統合失調症、人格障害などへの催眠の適用は危険です。また、催眠誘導される際、被催眠者にはさまざまな思いを抱きます。この気持ちを理解し、不安を解消することが催眠誘導の危険を低減させることになります。精神疾患についての精神医学的知識と、精神力動的な人間理解が催眠誘導には必要となります。
3. 心理臨床家としての態度
先にも述べましたが、これなくして催眠家は名乗るべきではないでしょう。

催眠はどのように学ばれるべきか
 催眠術の講習が巷には溢れていますが、私はこれに反対する立場です。何度も言うように、真理臨床家としての知識と態度なくして催眠を用いることはあってはなりません。もしこれらなしに催眠誘導を行えば、被催眠者を危険に曝すことになります。「ただ催眠誘導ができるだけ」の催眠術師の存在は医療としての催眠の信用を貶め、本来なら催眠によってより高い効果が得られるクライエントに大して催眠を適用できなくしてしまいます。

 催眠を学びたいのであれば、催眠を専門にされている先生がみえる大学で心理学を専攻し、出来れば大学院へ進学して、そこで催眠を学ばれることが一番でしょう。学術的な学会に入会されることは当然必要になります。

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